あたしがそろりと手を伸ばすと、今プールから上がろうとしている鴇田がそれに気づいて戸惑うようにあたしを見てきた。


「イッちゃん…」


ドクターが心配そうにあたしの肩を撫でていたけれど、あたしはそれを振り払って今度こそ


両手を広げて鴇田に抱きついた。


「イチ―――…」


鴇田がプールからあがってプールサイドに腰を下ろすと、ぎこちない手つきであたしを抱きしめ返してくる。





「…ごめんなさい……パパ


怒った?」




ホント…今日のあたし変。


あたしは鴇田が怒ってるときしか知らない。


“怒った?”なんて今頃になって改めて確認しても意味ないし。


『何てことしでかしてくれた。これじゃ台無しだ』


と言われると思ってた。


けど


鴇田はあたしの濡れた髪を撫でながら





「いや。怒ってない。



お前が無事で





良かった」





たった一言短く言われて、あたしは鴇田の腕の中


何だか凄く泣きそうになった。


ああ


鴇田の体温は―――




響輔のそれと良く似ている。




そのことに



はじめて気付いた。





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