げほっゴホッ!!


肺が悲鳴を上げているかのように痛い。


水を飲んだのだろうか、気道がしまって息ができない。


「イチ、大丈夫か!


しっかりしろ」


鴇田はあたしを助けるためにプールに飛び込んだみたい。



バカみたい。


自分だってだいぶアルコール入れてるだろうに、第一夏の夜にスーツのまま水泳できるほど若くないってのに。



それなのに…


「一結!大丈夫かっ!」


もう一度聞かれて、あたしの濡れて額に張り付いた前髪を丁寧に掻き分けながらもあたしの顔色を伺っている。


「イっちゃん、大丈夫ですか!」


とドクターもさすがに驚きを隠せないのか懸命に手を差し伸べ、


騒ぎを聞きつけたキリさんが


「タオルを!大至急よ!」と店員に命じている。


大勢居る店員は顔を青くさせて


「お客様!!大丈夫ですか」


ドクターと一緒になって手を差し伸べ


「ああ、すまない。酔って足を滑らせたようだ」と鴇田はあたしを抱きかかえながらもプールサイドへ移動していく。


あたしはプールに落ちる前にこの手を払ったって言うのに、


でも鴇田は決して離すまいと言う感じで力強くあたしを抱きしめる。


あたしは今度こそ抵抗らしい抵抗はせず大人しくされるがまま。


父親に抱っこされるなんて、もしかしてはじめてかもしれない。




でも


案外いいことなんだな…と思った。





鴇田はあたしを先にプールサイドへあがらせると、待ち構えていたドクターとキリさんが二人して助け出してくれた。


「水を飲んだようだね。息を大きく吸って吐いて…」


ドクターに背中を撫でられ、言われた通りにするとまたも咳込んで口から飲み込んだプールの水を吐き出した。


「体温が下がっている。タオルを急がせて」


ドクターはキリさんに命じて、キリさんは言われた通り店の奥へ走っていった。


ドクターの手があたしの背中を撫で続ける。




でも



あたしは








パパの手がいいの。