こうゆうときって駆けつけて助けてくれるのって大抵自分の王子さまだったりするじゃない?


そこでもっともっと運命感じちゃったり。


でも駆けつけてきたのは王子さまでもなく






父親だった。






しかもヤクザ。


相変わらずこのクソ暑い夏の夜に、汗も浮かべず細身のスーツをきっちり着こなしている。


その涼しい顔の表情を少しも崩さず、


「その女から手を離せ」


“鴇田”は目のヤバい男の手を捻りあげると、男はびっくりしたようにあたしから手を離した。


「おい、おっさん!あんたこの子の何だって言うんだよ!」


もう一人…あたしの行く手を先回りをしていた男が慌てたように喚き、


「口の利き方がなってないようだな、クソガキ共」


鴇田は簡単に男の手をさらに捻りあげた。


「いっ!いででででででっ!!」


男がみっともない悲鳴を上げ、鴇田がぱっと腕を離すと男はその反動でよろけた。


「お、おい。ヤバいよ。この女のオトコなんじゃねぇ?」


腕を掴まれた男は手首をさすりながら目のヤバい男を目配せ。


オトコ―――…って彼氏ってこと!?


冗談キツい!


そんなことを思ってると


「おい、いいんかよ!こいつの親父はこの辺一帯のヤクザの元締めだぜ!」


もう一人…最後についてきた男がここになってようやく口を開き、あたしと鴇田を睨み上げる。


ヤクザ…


ああ、なるほど…それであのヤバい目の意味が分かった。


クスリ漬けのナンパ男じゃなく、チンピラだったってわけか。


「ほぉ、それで?」


鴇田はおかしそうに笑って


「い…いいんかよ!あんたらなんてすぐに身元を割り出して、そのあと…」


「そのあとは?どうなるんだ?


言ってみろ」


鴇田はその男に迫るとドスを含ませてその男の胸倉を掴んだ。


「こ…こいつの親父さんに泣きつけばお…お前らなんてあっという間に殺されるんだからな…」


鴇田のただならぬ迫力に押されてか、男は言葉とは反対に震える声で何とか答える。


なんだか男たちがかわいそうになってきた。


鴇田に喧嘩売るなんて、それこそ数秒で墓場よ。


「……やめなさいよ、この男はねぇ」


言ってやると


「お前は黙ってろ」


鴇田はドスのある声をあたしに向けて、あたしは口を噤むと肩をすくめた。


どうしたって言うのよ。いつもはどんな下っ端が何を言っても、そんなこと気にもしないくせに。


さっさと締め上げて用を済ませるってのに。





「どこの組だ。言ってみろ」





鴇田は尚も詰め寄り、


「は、林田組だ!」


男が観念したように両手を挙げ、それでもまだ虚勢を張って答える。