響輔―――…


『手が離せない』と言われてから、


あれ以来電話が来ない…


怒ってるのかな。


響輔は『違う』って言ってたけど。


でも龍崎組に行って響輔にちょっかい掛けたこと―――やっぱり鬱陶しかったに違いない。


連絡がないことを気にしたくなくて、あたしはあれから分単位で仕事を詰め込んだ。


マネージャーはいつになく積極的なあたしに喜んでいたけど、単にケータイが手元にある状況がイヤだっただけ。


仕事を詰め込みすぎたせいか、ここ二日間まともに寝てない。


高いファンデーションを塗っても寝不足からくる肌荒れは隠しきれてない。


寝てないせいかな…何だか体もだるいし。




響輔―――


また電話する、って言ったのに―――…







何考えてるの、あたし―――



自分の考えに嫌気がさして、手にしたケータイをバッグに仕舞いいれる。


今日も響輔がくれたテディはあたしのバッグで揺れて、あたしと一緒。


バカみたい。


こんなちっちゃなテディ一つで浮かれちゃって。


前は平気で男たちからの貢物として宝石やバッグを貰ってたし、それに対して何の感情も抱いていなかったのに。


電話なんてあたしからしなくても男からしつこいぐらい掛かってきたてのに。


「…いやんなる」


独り言をもらして額に手をやっていると、



「ねね!♪おねーさん♪」


若い男に声を掛けられた。たぶん大学生ぐらい…が三人。


ちょっとチャラそうだけどなかなかのイケメンだった。


絶対に“道を教えてください”って雰囲気ではなさそうだ。


「一人?今から遊びに行かない?」


やっぱりナンパか。


「行かない。今から約束あるの」


あたしはぷいと顔をそらすと


「うっそだぁ♪さっきからずっとここに居るじゃん。


しかも落ち込んでるっぽいし、男にフられたでしょ」


と一人の男がにやにやして言う。


決め付けるなっつうの。


タクシー拾うためにうろうろしてたっての。


しかも意中の彼にはとっくにフられてるわよ!


あたしは男の誘いを無視して歩き出した。




もうタクシーを待ってらんない。