またも目が覚めたとき、どうしようもなく胸が締め付けられていた。


心臓が


痛い。


あたしはタトゥーのある場所をそっと押さえた。


龍の墨絵図が、何かに呼応するかのように肌を刺激する。


「……痛い…」


この感覚―――……あのときも……


あたしが龍神社で、ある筈のない祠を見たときと同じ感覚―――




向かい合って位置する龍と不死鳥の像。


あの何とも言えない悲しみを湛えた瞳。


あのときと同じ感覚。



かごめの歌は



悲しい唄なのだ。



あれは極道界の崩壊や統治を意味する唄じゃなく




実は悲恋の唄なんじゃないか。



そんな風に感じた。


そういや千里のおばちゃんも昔好きだった人の妹さんが、“かごめ神社”で亡くなったとか…


千里のおばちゃんはこの東京でその好きな人と再会した。でも実際おばちゃんは千里のおっちゃんと結婚しておっちゃんを裏切るつもりはないだろうし、


その男だって千里のおっちゃんからおばちゃんを奪うつもりはないだろう。


―――千里の入院している病院に現れたタイガ。


白へびさまの存在を知っていたタイガ。


おばちゃんも恋の“守り神”だって言ってた。


二人が同郷だって言う確信はないけど、





あたしは




おばちゃんの初恋の人がタイガで、タイガは妹さんを亡くしていて、


冷たい氷の中に浮かぶ女の子……


あの子はタイガの妹なんじゃないか。


最初は叔父貴の秘書のキリさんが妹だと思ってたけど、本当の妹さんは殺されたかもしれない。


殺されて


もうこの世のどこにも居ない。







もしかして、玄武の追っ手に





殺されたのかもしれない。





だから女の人は言ったんだ。生きていたらきっと大人になっている人―――


タイガのツレってのはその女の人のことで、居るはずもない妹さんに




パンプスを買ったに




違いない。