女の人はあたしに支えられながら目をぱちぱち。


「謝れっつうのが聞こえなかった?オバサン」


ガムをクッチャクッチャと下品に噛んで、男が女の人を覗き込む。


その姿を見て


ブチッ!


あたしの中で何かがキレた。




「てやんでぃ!!


ぶつかってきたのはてめぇらの方だろうがっ!




この人に謝れっ!」





例のごとくあたしが怒鳴ると、


「はぁ?」と男たちが顔を歪める。


「りゅ、龍崎さん!」


新垣 エリナが不安そうにあたしの肩を揺さぶったが、ここで謝るのは筋違いってもんだ。


江戸っ子の名がすたるぜ。


「何、あんた」


男たちが迫力のない睨みで舌打ちをしてあたしたちを眺めて、すぐにその顔色を変えた。


にやにやと下品な笑みを浮かべて


「いてっ!痛ぇよ!!骨が折れたっ」


一人が大声で喚きだした。


まだそれほど遅い時間帯じゃなかったから、人通りもたくさんある。


だけど、この光景を見てあたしと目が合った通行人たちは、顔を逸らしそそくさと歩みを速めた。


関わりたくねぇのは分かるがよ。


誰か止めねぇんかよ。


「それぐらいで骨折れるたぁどんだけカルシウム足りてねぇんだよ。


骨粗しょう症じゃねぇの?」


あたしが言ってやると、


「なんだ、このクソアマ。可愛げねぇな」


と、痛がってる(フリ)をした男とは違う男が言って、




「おい。この女以外二人には来てもらおうぜ。


治療費についての“話し合い”だ」




男がにやにやして女の人と、何故か新垣 エリナの手を掴んだ。