「可愛い指輪だね。龍崎くんからもらったの?」



新垣 エリナはピンセットで器用にストーンを乗せながら、聞いてきた。


「あ…うん…」




「いいなー♪龍崎くんてセンスいいね。


あたしもいつか大好きな人から貰えるといいな。



心から愛する人に」




もらえるよ。


あんたなら。


そりゃ…ちょっと道は外れちゃったかもしれないけど、でも





女の子には誰もがたった一人の王子様がいる。


誰もがたった一人のお姫さまになれる。





運命の人がいる。





新垣 エリナだってリコだって、あたしだって―――





あたしの王子さまは二重人格でエロくてヤクザな人だけど…


"あれ”を王子さまと言うのは白馬の王子さまに失礼だがな。



でもあたしにとっては



王子さまなんだよ。






「うわぁ。


うわぁ!」



出来上がったネイルアートを眺めて、あたしはバカみたいにその言葉しか発せなくてひたすら感心と感動。


こんなに可愛くしてもらったのはじめてだよ!


「あたし、お姫様みたい!」


塗ってもらった手を眺めて思わず言うと、


「お姫様みたいだよ」


と、新垣 エリナも嬉しそうだ。


「器用だよなー。ネイリストにもなれんじゃん」


あたしが言うと、


「これぐらい好きだったら誰でもできるってー。


でも、二つ同時に出来たらちょっと嬉しいかも~


そうゆう総合的な美容の専門学校もあるんだ、ほら!」


新垣 エリナは本棚からいっぱい専門学校のパンフレットを取り出してきて、あたしに見せてくれた。


「ここは近いけど学費が高いし。


ここはレベルが高くてあたしの学力じゃちょっと無理めなんだけど、プロになれる確率がすごく高いの。


ここはね…」


一生懸命に話してくれる新垣 エリナ。


本当に……なりたいんだな。


そう考えると、


その熱心な気持ちを、夢を、逆手にとって汚い脅しを掛けて来たあの淫行コーチのことが益々許せなかった。



何枚か説明していた新垣 エリナは、急に黙り込んだあたしを見て、慌てて言葉を呑みこんだ。


「ごめん、つまんなかったよね!あたしってば一人で」


何を勘違いしたのか、新垣 エリナはその並べられたパンフを片付けようとする。


あたしはその手を止めた。