その帰り道、新垣 エリナとバイトの出来事を喋っていると、


彼女のバッグハンドルでオオカミのぬいぐるみが揺れていることに気付いた。


同じようにあたしのバッグでもラム子が揺れている。


このラム子を拾ってくれたタイガは―――妙に警戒してるみたいだったが。


「ねぇ、そのオオカミ。こないだ電車の中のあのおにーさんから貰ったヤツ?」


「そぉ。気に入ってるの」


と、新垣 エリナは顔を赤くして僅かに俯く。


ははぁ。


単に気に入ってるだけじゃなくて、新垣さんあのおにーさんに惚れたな??♪


「あの電車に乗ったらまた会えるかも♪」


あたしが提案すると、


「でも結婚してるぽいし、あたしなんてただの女子高生だし、相手にしてもらえないよ」


新垣 エリナは苦笑いでオオカミをきゅっと握る。


「きっと奥さんの尻に敷かれてるよ」


あたしが笑って、でもその笑顔を途中で固まらせた。


そうだよ…


あの電車に乗れば、またあのおにーさんに会えるかも。


タイガは警戒してたけど、あのおにーさんには悪意の欠片も感じられなかった。


ありゃ完全なカタギだ。関係者じゃねぇのは確かだ。


確かにかっこいいおにーさんだけど、でもあたしはおにーさんに会うのが目的じゃない。


あのおにーさんは



タチバナと仲良しっぽかったし。





“さくらだ”




の意味を知れるかも。




「新垣さん!行こうっ」



あたしは新垣 エリナの腕を引いて走り出した。