責めないよ―――


「響輔さぁ…あいつには立場とか気持ちとか色々複雑なもんがあるみてぇだし。


俺気付かなかった、


あいつって色々複雑だったんだな」


「お前ほど単純とは思ってなかったけどな」


「単純言うな。俺は少なくともお前よりは複雑なことを考えられる」


ぽこっと頭を軽くはたかれ、あたしは叩かれた場所を撫で撫で。


これほど近づいた戒はあたしにキスすることなく、そっと離れていく。


またもビールを飲みながら





「俺、あいつを傷つけた。



深く考え無しに言いたいこと言って……」




戒はビールの缶に口を付けたまま、また目を伏せる。


戒―――……






あたしはすぐ傍まで移動して戒のふわふわな髪をそっと撫でた。





「人は誰でも…誰かの近くにいれば、楽しいことだけじゃなく


傷つけることだってある」



実際、生まれたときからすぐ近くにいて、いつも守ってくれた


叔父貴のこと、




―――あたしはたくさん傷つけた。




傷つけられたこともある。でもそれでも離れないでいるのは


互いに、一言で言い表せない深い愛情があるからだ。





『愛してる』




あたしは叔父貴のあの言葉を拒否した。


叔父貴を―――傷つけた―――……


でも叔父貴は変わらずあたしに接してくれている。





変わらず深い愛情を―――




「そうやって―――関係を深めていくものだし



そこで離れたら、その絆はホンモノじゃないんだよ」




あたしは目を伏せている戒の頭をぎゅっと抱き寄せると、



「うん」


戒はあたしの腕の中で小さく頷いた。