■ バット!? ■



わぁわぁ喚いていると


TRRRR…


突如タイガのケータイが鳴って、タイガは


「ちょっと待って」とお手上げのポーズでスーツの内ポケットを探る。


ケータイのディスプレイを見たタイガはそれまでのおふざけから一転、一瞬……ほんの一瞬だけ驚くほど目を険しくさせた。


「失礼。ちょっと急用みたいだ。


電話に出てきてもいいかな」


似非臭い笑顔を貼り付けてタイガは店の奥を指差し。


「おめぇに用はない!電話でも何でも出てきて帰ってくんな!」


と言いたかったが、それは言わずに心の中に留めておいた。


タイガがあたしたちの返事も聞かずに立ち上がる。


さっきの―――…一瞬の表情が気になる。


タイガが店の奥へ向かう後ろ姿を目で追いながら、


「ごめん、リコ。あたしもちょっと…すぐ戻ってくるからここに居て」


と言い置いてタイガのあとを追った。


タイガは


トイレの通路の奥まった場所で電話に出たようだ。


あたしは壁に隠れてタイガの会話を盗み聞き。





「――――…もしもし?この電話に掛けてくるなと言ったはずだろう?」






押し殺した声はいつになく真剣で、冷たく感じた。