俺が後部座席に目を向けると、後部座席の窓は半分影がかかっていて、誰か座っているのは分かったが、それが彩芽さんだとは判別できなかった。


「戒さん…?」


助けにきてくれた響輔が急に態度を変えた俺を不思議そうに見る。


俺は真剣な顔で後部座席を見据え、だがその人物が彩芽さんかどうかは分からず。


白い唇に浮かんだ赤い唇。


女だと言うこと以外…


まぁこいつが乗せる女なんて彩芽さんしか居ねぇだろうが。


俺はその車に近づいて確かめようと窓を覗き込もうとしたが、


暗がりの中、女が何かを運転席のドクターに呟き、


「お邪魔みたいだから私たちはこれで失礼しますよ♪ふふっ


オタノシミの続きを楽しんでいてください」


一方的に言われて、手を伸ばした先で車が発車しだした。


結局、後部座席の女が彩芽さんだとは分からなかった。



でも間違いじゃない。


あのオピウムの香り。






あれは疑惑の女―――




彩芽さんの香りだ。