コン コン
病室の扉を叩く音

「入るよ」
由衣だ

「元気?」

「元気な訳ないだろ?」

「それくらい言えれば元気だって(笑)」

「そうか(笑)」
2人で笑った

「学校、楽しいか?」

「楽しいよ
光哉君は相変わらずだけど」

「あいつはそういう奴だから
ほっとけ」

「そうなんだ
なんか凄いね
で、タイガはどんな感じ?」

「俺?
順調だって」

「良かったね」

「サンキュ」

「治ったらまた出かけよ?」

「いいけど
どこにする?
次は由衣が選んで」

「どうしよー・・・
行きたい所 いっぱいあって悩む」

「考えとけよ」
由衣の頭にポンと手を置いた

「うん!!」

「・・・そろそろ帰った方がいいんじゃねぇーか?
親、心配するだろ?」

「そうだね
じゃあ帰るね
バイバイ」

「気を付けて帰れよ」

「うん
おやすみ」

「おやすみ」


ー20時ー
「入るぞ」
光哉が来た

「・・・」
俺はベッドでぐったりしている

「大丈夫か?」

「いや・・・」

「由衣ちゃん
今日、来たんだろ?」

「・・・来たよ
早く帰らせた」

「おまえって奴は・・・
不器用にも程があるだろ」

「なんだよ」

「辛かったら辛いっていえばいいだろ?」

「言える訳ねーだろ
これ以上、由衣を困らせたくねーんだよ」

「だからって・・・」

「・・・デートの約束したんだ
今の俺・・・歩けるほど力、残ってねぇーんだ
一人の女を守ることができないんだ
無様だろ?」
目を隠すように腕を押し当てた

光哉がいきなり俺の胸倉をつかみ
「お前が頑張ってる事、皆知ってんだ
いくら無様でも 守れなくてもいいんだ
生きるって事を考えろ 諦めんなよ!!」

「・・・」
驚いた 光哉が怒ったとこを初めて見た

目が覚めた

「俺は・・・」

「タイガ・・・
生きることを諦めたらそこで終わりなんだよ
それは、お前が一番よく知ってる事だろ?」

「そうだったな・・・
ありがとう」
思わず涙があふれ出してきた

「泣くなって
一人で抱え込むなよ
もっと人に甘えろよ」

「不器用だからムズイんだよ(笑)」

「そうだった
忘れてた」

「ありがとな
光哉に借りが増えたな」

「きっちり返してもらうからな」

俺らは笑いあった


「お前なら大丈夫だって
まぁ、今日はこの辺で・・・
ゆっくり休めよ
おやすみ」

「あぁ、じゃーな」

光哉は静かに病室の扉を閉じ部屋を去った