なんで俺じゃあかんねん

唇を離すと

驚いたように俺を見ている。

真っ赤な顔のままで。


「これでわかった?」


葵の両腕を捕まえたまま、至近距離で見つめあう。


好きな女とキスできて

こんなに近くにいることに

俺の心臓はとんでもないことになっている。


水を浴びて、落ち着いた熱がまたあがってくる。

息が苦しくなってくる。


それでも・・・


「俺は、弟としてじゃなくて

一人の男として、一人の女のおまえが好きやねん。

ずっと前から、ほんまにずっと好きやった。」


いつからかは自分でもわからない。

きっと、出会ったときから。


物心ついたときにも、いつも隣にこいつがいたから。

好きなのがあたりまえすぎて
気づかなかった。



「葵・・・・。」


そして、今度はそっと抱きしめる。

女の子の葵が、痛くないように。



「すぐじゃなくていいから。

俺のこと、弟じゃなくて、男としてみてほしい。

前にも言ったけど、俺はおまえのこと姉ちゃんなんて思ったことないから。」