なんで俺じゃあかんねん

「大丈夫やって!
もう葵のことはなんとも思ってないし。

俺も今の彼女と仲良くやるから。」

相崎くんは、また笑って立ち上がった。

「そろそろ帰ろうかな~。

遼にちょっと声かけてくるわ。」

そのまま、遼くんたちのテーブルまで行ってなにやら会話をした後、カバンを持って戻ってきた。

「遼はもうちょっとおるみたい。俺は帰るわ。

ごめんな、デート中に割り込んで。」

「あ、いや・・・。」

真田くんは答えるけど、私はなにも言えず曖昧に笑顔を見せるのが精いっぱいだった。

「ハルとも話せてよかったわ!またな!」

「はい。」

私は何も言えなかったのに、ハルは自然に受け答えできている。


でも、相崎くんが横を通り過ぎるとき、握っている手をすっと隠した。


ほどかないのか・・・。


それにちょっとだけ、うれしくなる自分がまた嫌だった。


幸か不幸か、私はもうパスタを食べ終わっていて、
利き手をずっとテーブルの下にしまい込んでいても不自然さは少ない。

前の真田くんも気づいてない。


なら、もう少しだけ・・・。

ずるい、悪魔のささやきだ。


ハルのドリンクが終わるまでの間だけ。