葵は、しばらく圧倒されたように、俺の顔を見つめていた。

目をさらない、二人とも。

いや、そらせない。


でも、ハッとしたように、一度俺から目を離して、そして取り繕うように笑う。

「っもう!またそういうこと言う!

いい加減に私のことを敬って・・・『葵!!』

無理矢理にいつもの空気に戻そうとしても、無駄やから。

俺は、腹くくったから。

強い口調で、話を遮ると、彼女の肩がびくっと震えた。

それからも、俺の方を見ようとしない。

けど、俺はもう戻らへん。


「俺は、おまえのこと姉やとは思ってない。」

もう一度。

「俺らは血つながってないし。

どう思おうと、俺の勝手やろ?」

冷たい言い方をあえてした。

傷つけたかもしれへん。

おまえは、いつでも俺の姉であろうとしたから。

おまえが姉でいようとする限り、ずっと関係は変わらない。

「・・・ごめん。」

傷つけたかも、と思ったら口から出た。

「でも。」

・・・その次の言葉がでない。

なんて言ったらいいのか。

このまま「おまえが好きやから。」とまで言えるほど、まだ勇気もないし。