なんで俺じゃあかんねん

「ハル!」

今度は逆に葵が俺の手をひいて、公園の真ん中へと導く。

ずんずん歩いていって、入り口とちょうど反対側にあるブランコの前で立ち止まった。

このブランコ・・・

よく葵と一緒に漕いだ。

それで、ブランコから飛んで、どっちが遠くまで飛べるか競争した。

今は、危ないからってブランコからのジャンプは禁止されてるらしい。

そのほうが正解かも。

だって。

「葵、あの時の怪我はもう傷とか残ってないか?」

そう、このブランコで葵は足にけがをした。

着地に失敗して、転んで、ちょうど膝のところに割と大きな石があって。

めっちゃ血が出てたのを、今でも覚えている。

「あーうん。もう全然大丈夫。」

こんなに血がでて死んじゃったらどうしようって。

そんなはずないのに、あの時は大泣きした。

「あのとき、怪我した私よりハルのが泣いてたよな~。」

「うるさい。」

無力なガキの俺は、葵が血をだらだら流してるのに泣くことしかできなくて、
結局通りかかった近所のおじさんが家まで葵をおぶってくれた。

「可愛かったよな~。

今ではその面影は全然ないけど。」

悪戯っぽく笑う葵。

ったく、こいつ・・・・。