なんで俺じゃあかんねん

「・・・あの、ハル。」

あ・・・・。

二人を見ていた俺は、今の状況を思い出す。

左手は今、確かに葵の右手をしっかりと握っていて、あたたかい。

手を繋いで歩くなんて何年ぶりやろ?

葵の手は相変わらず、俺より一回りか小さい。


「さっきの、は・・・。」

葵に言われて、さっき勢いに任せて言ってしまった言葉がよみがえる。

俺何言ってんねん!!!

彼女、とか言った。

いやいや・・・勢いとはいえ、それはアカンやろ。

こみあげてくる羞恥。

でも、もう言ってしまった以上、時間はもどらないわけで。

「う、うるさい!仕方ないやろ、あの状況は。」

「そう、やけど。

でも、怒ってたんちゃうん?」

そうや、俺は怒ってた。自分に。

けど今はそれどころじゃなくて。

嬉さと羞恥。

「もういいから、それは。行くで。」

葵の手をぎゅっとにぎる。

振りほどかれへんように。