なんで俺じゃあかんねん

葵はインドアで、昔からスポーツはあまり得意じゃないらしい。

姉ちゃんもそうやから、たぶん血筋やな。

だから、こうしてスポーツ用品店に来たこともあんまりないんやろう。

店内を新鮮そうに見ている。

「ハルハル!!ボールもあるよ!」

さっきのぎこちなさは、もうすっかりなくなっていた。

昔から、表情がぽんぽん変わるからな。

忙しい奴やで。

「バスケのボールって大きいよな~。

私の顔くらいあるんちゃう?」

「おまえの顔どんだけでかいねん。」

「え、私の顔よりでかい?うわ、ほんまや!」

すぐ近くにあった鏡でボールと顔を比べて驚いている。

「それに、重いよな~。

よくこんな重いの振り回すわ。」

振り回すって・・・

「でも慣れたら、これくらいの重さないとやりづらいで。」

「あ、それ真田くんも言ってた。」

・・・・え?

そこでいきなり先輩の名前が出てきて、俺は自分でもわかるくらいに顔が引きつった。

「まえに体育で、バスケやって。

男女どっちも体育館やったから、真田くんがプレイしてるとこ初めてみたけど、すっごいうまかったな~。

ほんまに、この重いボールを簡単に操ってさ~。」

手の中でボールを弄びながら彼女は笑う。


わかってる。

真田先輩はバスケセンスは。

昨日の決勝でも、試合自体は結局負けたから、インターハイ予選二位通過という結果になったけど、

真田先輩単体なら、相手チームのどの選手よりも光ってた。