なんで俺じゃあかんねん

そして迎えた日曜日。デート当日。

俺の希望で、駅に11時に待ち合わせにした。

家から二人で出てもいいけど、それやとデートっぽくないやん?

いつもと同じになるから。

そして今、時間は10:55。

駅の改札前で待っていると「ハル!」と名前を呼ばれた。

振り返ると、私服姿の葵がいた。

いつも見ている葵の私服。

でも、なんだか今日は特別な気がしてくる。

だって、俺と出かけるために選んで着てきた服やろ?

涼し気なシフォン生地の淡いピンクのトップスに、ジーンズのガウチョ。

どっちも、見たことある服なのに、まるで今日初めて見たような感覚だった。

「おう!」

セミロングの髪を今日は少し撒いていて、軽く化粧もしている。

それなりに、おしゃれしてくれた?

とかちょっと舞い上がる。

「ごめん、待った?」

「いや。まだ時間なってないし。」

「そうやけど。」

葵は、昔から割と待ち合わせにはしっかり間に合わせるほう。

そういうところも、好ましい。

「ハルは、何時くらいから待ってたん?」

「さあ?忘れたわ。でもそんなに待ってない。」

「えーほんまに?」

「ええから、はよ行くぞ。」