なんで俺じゃあかんねん

「ねえ。ちょっと聞いて・・・るん?」

パッと葵が俺を見て。

時がとまったような感覚がした。

俺は葵の方を見てたから、その距離およそ10cmほど。

至近距離で見つめあう。

・・・やばい。

葵の瞳に俺が写ってる。俺だけが。

葵の頬がみるみる染まっていくのを見て、さらに鼓動が早くなる。

可愛いって思うし、触れたいって思う。さっきよりももっと。

呼吸が、できない・・・。

瞬きも、忘れる。

葵が、こんなに近くにいる・・・。

「な、なに・・・見てんの!?」

空気を壊すように、パッと顔をそらされた。

「え・・・。」

無意識やった。

ほんまに無意識で、俺は持っていたシャーペンを置いて、葵の頬に触れた。

こっちを見てほしくて。

俺を、俺だけを見てほしくて、葵の顔をまたこちらへ向けさせた。

驚きが加わって、目を見開いている。

また、瞳に俺がうつった。

葵の大きな瞳に。今気づいたけど、少しだけ茶色い瞳に。

俺は真っ黒やから、違う。

だって、血つながってないもんな。

そう、だから俺を見て。

俺だって、おまえの視界に入る権利があるんや。

弟やけど、でも、弟じゃなくて。

だから、俺を見て・・・。