話し終えて、清水さんは「そうなんや。」と言ったあと、少し間を置いた。

「坂井くんの口からきくと、ちがうね。

やっぱりびっくりする。」

少しうつむいてから、また顔をあげる。

「だって、坂井くんってきっとこの学校の女子ならみんな知ってて、

みんなの憧れで、人気者で・・・。」

「え、なに?」

いきなり並べ立てられる称賛の言葉に、ぎこちなく笑う。

「あ、ごめん・・・。

だから!そんなモテモテな坂井くんが、一人の女の子にそこまで片思いしているなんて。

やっぱり、驚くというか。」

「俺、ちっともモテモテとかじゃないよ。

好きな女には、結局振り向いてもらわれへん。

それ以前に、何も行動できてへんへたれや。」

そう・・・

俺は結局へたれや。

"弟"って肩書をたてに、逃げてるだけや。

「うん。確かに。」

清水さんが、意外にあっさりと俺の言葉に同意する。

「もっと自信家なんやと思ってた。」

自信なんてない・・・。

少なくとも、葵のことに関しては、思いっきりぶつかっていけるだけのものを、俺は持ってない。