なんで俺じゃあかんねん

そこには、雅さんがいた。

「雅さん・・・。」

そう呟いたのは、俺じゃなくて葵。

「坂井先輩!真田先輩も。お疲れ様です。」

にこっと、なにも知らないかのように笑顔を向けてお辞儀する。

「あ、うん。」
「お疲れ、雅さん。」

葵は、彼女から顔をそむけるように下を向く。

その不可解な行動に、疑問がうまれる。

「坂井くん!探してたよ・・・。」

「え?なんかあった?」

「ダンス!一緒に踊ってほしいなって思って。」

「え!!」

大きな声をあげたのは、またもや俺じゃなくて葵。

「あ、いや・・・。」

3人の注目が集まり、葵はまた地面に視線を落とす。

「・・・ハルと、雅さんって、そういう仲?」

真田先輩が俺らを見る。

「私の片思いです!」

あまりに明るく言うから、思わず雅さんの方を見た。

彼女も視線に気づいて俺に笑いかける。

「あーそうなんや!さすがハル!モテるな~!」

「いや・・・先輩ほどじゃないっすよ。」

「いやいや。知ってるやろ?俺、片思い中やから。おまえの姉ちゃんに。」

「ちょ!真田くん!!」

なぜか慌てたように、先輩のシャツを掴む。

そして、俺の視線に気づいてまたすぐにその手をおろす。