なんで俺じゃあかんねん

好きな女の声で名前を呼ばれて、反射的に視界を開放する。

そこには、びっくりしたような二人。

あたりまえか。

会話を終えた二人がグラウンドに戻ろうとすることは。

そして、俺はグラウンドから来たんや。

戻る方向に俺がおるのはあたりまえ。

俺は、二人一緒の姿を見たくなくてか、無意識に視線を逸らす。

「なにやってんの?」

「・・・。」

「あーハル、もしかして・・・聞いてた?」

居心地悪そうな真田先輩の声。

その言葉に体が勝手に反応した。

「うわーーまじかーー!!めっちゃはずかしいやん!!」

先輩はわざとなのか、オーバーリアクション。

葵は何も言わない。

てっきり『最悪。』とか『趣味悪い。』くらい言われると思ってた。

だから気になって、葵の方にだけ視線をやった。

目があった瞬間、葵は少し目を見開いてそしてパッと視線をそらした。

え・・・なにそれ。

なんの反応?

なんでそんな、気まずそうな顔するわけ?

「ハル、できればバスケ部のやつらとかには、言わんといてな?

絶対冷やかされるし。」

「あー。」

声を漏らして、そのまま頷く。

別に、広める気なんてさらさらなかった。

「ありがとう。」

作り笑いを浮かべながら、頬をかく先輩。

その横で、相変わらず俺の方を見ようとしない葵。

そんな彼女を、半ば意地で見つめ続ける。