なんで俺じゃあかんねん

二人の間に沈黙が流れる。

俺も、早く立ち去ればいいのに、やっぱり気になってしまってその場から動けない。

「あの・・・それで。」

「うん?」

ぎこちなく会話をまた再開させたのは真田先輩。

「いや・・・あの、今から言うことはホンマに断ってくれていいんやけど。

俺、待つって言ったし。そのつもりやし。」

「うん。なに?」

「えと・・・後夜祭のダンス!」

おっと・・・マジか。

「あ・・・・。」

葵も気づいたように声をもらす。

「よかったら、俺と踊りませんか。」

「・・・でも、真田くんいっぱい申し込まれてたし。」

また、天然発言。

「うん・・・けど俺が踊りたいのは一人やから。」

聞いてるこっちがはずかしい。

「あ、そう・・・ですか。」

「うん。」

そして、また沈黙。

あーあ・・・むかつくなー。

やっぱりむかつくな。

こうやって、葵が他の男に言い寄られてると。

苛々が募るのがわかる。

でも、だからと言ってこのまま二人の前に飛び出せる勇気はなくて。

はあ・・・なにやってんねやろ。

でも気になるから立ち去ることも、やっぱりできん。