なんで俺じゃあかんねん

後夜祭を控えた空き時間。


「え、これは何の列?」

「ハルに後夜祭のダンス相手を申し込む列。」

少し離れたところで聞こえたリキトと斉藤の会話が聞こえた。

おい、助けろよ。

文化祭の終わりが、こんなありきたりな締め方やなんて知らんかった。

いや、俺も文化委員やし、後夜祭があるのは知ってたけど。

普通に友達としゃべりながらキャンプファイヤー見とけばええと思ってた。

その内容は自由で、いつからか後夜祭で流れる曲に合わせてフォークダンスをすることが毎年の暗黙の了解となっていたと。

そして、これまたお決まりで、ダンスを踊った男女は結ばれる・・・

女子が好きそう。

それで俺は、名前も、なんなら顔も初めて見た同級生から先輩まで、いろんな女子からダンスを申し込まれている。

すべてやわらかく断っているが、その女子らがいつのまにかご丁寧に列を作ってるから、目立ってしょうがない。


「坂井くん!私3年やねんけど高校最後の思い出に!お願い!!私とダンスして!

付き合ってほしいとかじゃないから!
ただ、イケメンとの思い出がほしいだけやねん!!」

いや・・・・そんなこと言われても。

「気持ちはうれしいですけど、すいません。」

そんな理由の3年がこれまでにも何人かおったし、この人だけ特別扱いはできん。

はあ・・・いつまで続くんや。

俺には考えないとあかんことがあるのに。