なんで俺じゃあかんねん

「おかしいやろ。

姉貴に惚れてるなんて。」

自分で言って泣きそうになる。

「でも・・・あかんねや。

ほんまに・・・無理で。あきらめたくても、無理やねん。

他の奴でも、無理。あいつじゃないと・・・。

あいつが・・・葵のことが・・・・好きや・・・・。」

なんの涙かわからないけど、こみ上げたものを流すまいと必死になる。

顔を見られたくなくて、うつむく。

そんな俺の頭を、雅さんは背伸びして撫でた。

「おかしくなんてないよ。

言ったやん。素敵なことやと思うって。」

にっこり笑った彼女の顔は、慈愛に満ちていて。

あーそうか・・・認められるってこういうことか。

「見てたら、どれだけ坂井くんが、葵先輩のこと好きなのかなんて、すぐわかったよ。

ずっと、ずっと私が、坂井くんを見てたから。」

え?

どういうこと?

「坂井くんは葵先輩ばっかり見てたから、気づいてなかったやろうけど。」

ふふっとまた笑う雅さん。

「わたし、坂井くんのことが好きです。」

「え!?」

その可能性も考えたけど、でも限りなく低いと思ってたわけで。

まさに寝耳に水。

「でも、自分の気持ちを自覚した瞬間、坂井くんの気持ちが誰に向いてるのか

坂井くんがずっと誰を見てるのか、わかったから。

だから、私は応援しようと思った。

初めて好きになった人の、恋を。」