なんで俺じゃあかんねん

「来て・・・。」

俺の腕を、誰かが引いた。

放心状態だった俺は、その子に連れられて体育館を出た。

廊下を歩くその子の後ろ姿をボーっとみる。

相変わらず綺麗な長い黒髪やな。

なんで、俺のこと連れ出してくれたんや?

てか、あんなに大勢の中でよう見つけたな。

そんなことを思いながら、手をひかれるがままに第二音楽室までやってきた。

「大丈夫?」

雅さんは音楽室に入ると、扉をしめて俺を振り返った。

「あー・・・うん。」

彼女はそのままいつものピアノの椅子へ腰かける。

「なんで連れてきたん?俺を。」

「だって、辛そうだったから。あそこにいるのが。」

「あー。」

そっか・・・。

「坂井くん・・・・。」

そっか、そっか・・・・。

なんか、もうええか。

雅さんには。

「ありがとう。連れ出してくれて。」

認めて、力なく笑うと彼女も微笑んだ。