なんで俺じゃあかんねん

「雅 葉月さん!俺と付き合ってください!」

はい、予感的中・・・。

男は雅さんへ今まで思っていたことを並び立て、最後にその言葉で締めくくった。

俺の方へ背を向けている彼女の表情は見えない。

雅さん、モテるんやな・・・。まあ、美人やしな。

それにしても、知ってる奴同士の告白現場とか、ほんまに気まずいねんけど。

なんとなく、俺は視線をそらしてしまった。

でも雅さん、なんて答えるんやろ?

それはちょっと気になる・・・。

「お気持ちはとてもうれしいです。」

しばらくしてから、話しだした。

雅さんは、マイクを渡されたけど、それを受け取らなかった。

マイク越しじゃない声は、ステージにいる俺たちだけしかきっと聞こえない。

「でも、私には他に好きな人がいるので、付き合えません。」

え!!雅さんに、好きな人!?

彼女は律儀に頭を下げて、俺の方へ向き直った。

パッと目が合い、瞬時にそらされる。

告白を受けた後だからか、顔が赤い。

俺も気まずくて視線をそらした。

雅さん、好きな人おるんや・・・。

天才の彼女に好かれる奴ってどんな偉人やねん。

でも、そっか・・・。

あまりなにも思わない自分に、不思議な気持ちがした。

雅さんを気になってるかと思ったけど・・・