なんで俺じゃあかんねん

「うちだって先輩のことくらい知ってるで。

女子の間でよく話題になってるもん。」

そうなん?

「バスケ部は同級生も先輩もかっこいいけど、

先輩の中ではとくに真田先輩がダントツにバスケうまくてかっこいいって!

一年女子も結構告ってる子いるよ。
みんな優しく断られてるらしいから、まさしく高嶺のあこがれの先輩やって噂されてる。」

ずいぶんと詳しいな。

俺が知らんだけか?

「へえ。」

「うちも間近で見たのは初めてやけど、やっぱりかっこいいな~。わかるわ!」

「横山さん、先輩みたいなのがタイプなん?」

ちょっと口元を緩ませて問いかける。

「え!いやちゃうって!うち好きな人おるし!って、あ!?」

思いっきり口を滑らした、というように口を手で覆う。

こんな人、実際にもおるんや・・・。

「ふーん、そうなんや?」

おもしろいこと聞いてしまった。

「あーちゃうねんって!これは・・・。

お願い!誰にも言わんといてな!」

必死で両手を合わせて頭を下げてくる姿に笑いがこらえられなかった。

「ははっ大丈夫やって!言わんから。」

「絶対やで!」

念押しして、彼女はまた仕事に戻っていった。