なんで俺じゃあかんねん

目当ての屋台が見えてきて、ソースのいい香りも漂ってくる。

「たこ焼きか~!」

遼はにこにこして列に並んだ。

そして「ハル!」と呼ばれる。

振り返ると、メニューを持って【たこ焼き魂】とかかれたピンクのTシャツに身をつつんだ葵がいた。

「葵先輩や!」

「遼くんも来てくれたん?」

「ってことはここ、葵先輩のクラスか~!

ハル、ここに来たかってんな。」

「は?ちゃうから。」

遼、余計なこと言うな。

「ちょっと腹減って、たこ焼き食いたくなっただけやし。」

「なんでもええけど。来てくれてありがとう。はい、メニュー。」

昨日、俺の部屋に来た時ちょっと様子がおかしかったけど、もう普段の葵や。

あれからちょっと気になってたのに。

なんや・・・

やっぱり俺の思いすぎやったんかな。

「坂井さん!俺もメニュー配るの手伝う!

って・・・ハル!遼も!」

「真田先輩。」

「葵先輩と真田先輩って同クラやったんすね。」

「あ、うん。え?坂井さんと遼、知り合い?」

「はい。兄貴の元カノなんで。」

それを聞いた真田先輩の顔がやや陰ったのを、俺は見逃さなかった。