「子犬のワルツ弾いてよ。」

まえに好きな曲と言っていたから。

雅さんは、一度俺を見て笑顔になって、そして鍵盤に指を滑らせた。

結構早い曲よな。

たくさん和音もあるし。

これも十分難しそうな曲やけど。

でも、雅さんは楽しそうに、鼻歌でも歌い出しそうな感じで、軽々と弾いている。

すげえ・・・

やっぱり、天才や。

俺は、近くの窓枠に体をあずけてただその音楽に耳を傾けていた。

本当に好きなんやな、ピアノが。

彼女がこうやって自由にピアノを弾いている。

楽しそうに。

昨日の彼女の表情からは全然違う。

・・・よかった。

本当によかった。