お昼休憩。

雅さんに呼び出されて、いつもの音楽室にいた。

ここは普段使われていないせいか、文化祭中も静かだ。

「坂井くんのおかげで、お母さんに自分の気持ちをもう一度ちゃんと伝えた。

最初は、めっちゃおこられたけど。でもそれも私のことを思ってのことやった。」

思い出すように笑う。

「ちゃんと、ちゃんと自分の言葉で、今思ってること言って、

頑張りたいって言ったら、お母さん泣いてた。」

いい母親やな・・・

「それで、わかったって言ってくれて、車で学校まで送ってくれた。」

「そうか。」

「うん。」

頷くと、彼女はおもむろにピアノの椅子に座る。

そして、慈しむように鍵盤を撫でた。

しばらく無言でピアノを見つめる雅さんを、俺は見ていた。