「お母さんに、文化祭に参加するなって言われたの。

私はコンクールに影響がないように、必死に練習時間を確保してきたつもりやったけど、お母さんにすれば今のままじゃ全然足りへんって言われた。

それで、腹が立ってそんなこと言うならコンクールなんかでえへんって言ったら、ピアノを捨てる気か?って。」

雅さんがピアノ捨てるなんて、そんなことあるわけないよな。

「そうじゃない。

私はただ、まえみたいに楽しくピアノが弾きたいだけで、コンクールとか評価とか、そういうのは違う気がするって言った。

そしたら、お母さんに言われたの。
ピアノを今後ずっと続けていくなら私みたいな考え方じゃ無理って。
そんな考えなら、ピアノなんかやめろって。」

そういった彼女の目から、また新しい雫が落ちる。

ぽたぽた落ちて、彼女のスカートを濡らす。

俺は、それを見ながら・・・

雅さんの母への怒り、そして何も声を掛けれない自分への怒りをかみしめた。

今まで必死に頑張ってきた彼女を見てきたから。

なにか力になりたくても、なにもできなくて
一人で気丈に笑ってただ頑張ってる彼女を見てきた。

ただ文化祭を楽しみたいって、それだけの願いも叶わないのか?

そんなことって・・・