「雅さん!!」

N公園を入ったすぐのベンチに、彼女は私服姿で俯いて座っていた。

俺の呼びかけに反射的に顔をあげる。

「・・・さか、い・・・くん・・・・。」

「うん。」

泣きはらした目。

真っ赤で、まぶたは腫れていて・・・。

どうしたんや?
なにがあったんや?

聞きたいけど、何も言わずに彼女の横に座る。

途中コンビニで買ったペットボトルのお茶を差し出した。

「ありがとう。」

素直に受け取り、力なく笑う雅さん。

いつもの頑張ってて強い雅さんとは打って変わって、今にも消えてしまいそう。

すごく弱くて、触ったら壊れそうな。

小さな肩がまだ小刻みに震えている。

あんなに強い彼女を、ここまでにするって・・・

「ピアノ?」

それしか思い浮かばんかった。

「なんかあった?」

雅さんは、俺の問いかけにもしばらく答えることはなかった。