「ちょっと!ハル!?」

いきなり着替え始めた俺に慌てる葵。

「どしたん?」

「俺、でかけるわ。すぐ戻るから。」

「待って。雅さんって・・・今。」

「うん。なんかわからんけど、泣いてたから。」

「だから、行くん?」

着替え終わって、葵の方を見て頷く。

俺は、N谷公園の最寄り駅を調べて、ここからのルートを検索した。

「ハル、あの・・・やっぱりハルの好きな人って・・・。」

「え。なんか言った?」

「ううん。なんも。気を付けて。」

そう言って笑った顔は、もう何度も見たことある、葵の笑顔だった。

「母さんらには適当に言っといて。

こんな時間に、とかなんとかうるさいと思うから。」

「わかった。私は先ねるわ。おやすみ。」

「おやすみ。」

俺はスマホと財布、ICをポケットに突っ込んで、小走りでN谷公園へ向かった。