なんで俺じゃあかんねん

手を伸ばせば届く距離。

ぐっと引き寄せれば、きっと男女の力の差で、葵の体は簡単に俺の腕の中にくる。

触れたい・・・・

でも。

都合よく考えて、勢いにまかせてそんなことをしたら
きっと取返しのつかないことになる。

のばしかけた手を、葵が離れてしまうという恐怖からくる理性で留める。

「なんで・・・?」

理由を聞かせて。

そしたら、きっと、この心臓もおさまる。

どうせ、ハルのくせにとか、弟やからとか、
そういう言葉がでてくる。

そしたら、この夢みたいな考えも醒めてくる。

熱くなってる俺の体も、冷めてくる。

「それ、は・・・」

葵は視線をそらした。

戸惑うように、さまよわせて取り繕うように、言葉を探している様子。

はよ言えや。
いつもみたいにえらそうに。

じゃないと、また本能が
俺の願望が、俺を支配しようとする。