なんで俺じゃあかんねん

気づいてないんやったら・・・

「おるけど。」

これくらい、言ってもいいやろ。

俺は、わざと葵の方に顔ごと向けて、目を合わせて言った。

「え・・・。」

戸惑ったような表情。
驚いたような表情。
そして、少し寂しそうな表情。

いや、最後のは・・・きっと俺の思い込みか。

「そう、なんや。」

それだけ言って、葵は俺から視線をそらせた。

しばらく何も言わない。

俺も前へ向き直って、とくになにも話さんかった。

「それって、やっぱり・・・さ。」

らしくない小さい声。

やっぱり・・・?

その一言に、俺はさっきまでなかった恐怖を覚える。