なんで俺じゃあかんねん

雅さんは、驚いていたけど、次の瞬間にははにかんで笑った。

「うん!」

久しぶりに彼女の目をちゃんと見た気がする。

葵のことは、雅さんにも誰にも触れられたくないのは変わらん。

けど、雅さんとは友達や。

つまらんことは、忘れて明日も一緒に頑張りたい。

仲直り?
・・・まあ、もともと喧嘩してないけど。

でも、俺はそんな気持ちで彼女の隣にいた。

「タイマーセットするわ。10秒でいくよ。」

横山さんがスマホを教卓の上にセットしてこちらへ駆けてくる。

・・・カシャッ

電子音が鳴って、クラスの奴らの歓声があがった。

なんやかんや大変やったけど、今思えば準備を楽しかったかも。

明日も、正直接客なんかごめんやけど
こいつらと一緒に頑張りたい。

高校最初の文化祭やし、気合いれるか~。

クラスの奴らを見ながら、俺は柄にもないこと思っていた。

「じゃあ、帰るね。」

「うん、ピアノ頑張って!また明日。」

「ばいばい!」

雅さんも、すっきりした顔で帰っていった。