なんで俺じゃあかんねん

「ちょっと待って。」

離れようとした雅さんの腕をつかむ。

「ん?」

不思議そうに振り返る姿に、

俺・・・なにしてんねん。

急に腕つかむとか。

「あ、いや・・・」

とくに用事もなかったのに。ほんまに。

「え、雅さん帰るん?」

どうしようかしどろもどろになってる時、
横から横山さんが声をかけてきた。

「うん。ピアノのレッスンあって。ごめんね?いつも。」

「そっか!大変やね。
あ、そうや!それやったら、雅さん帰る前にみんなで写真とらへん?

せっかく、男子も着替えてるし
雅さんも入って、全員で教室の飾りつけの前で撮ろうや!」

にこっと笑ってみんなに提案し、みんなもそれに同意した。

「写真・・・。」

ボーっと横山さんを見ている雅さん。

「撮ろうや、雅さん。」

せっかく明日は文化祭。

雅さんと一緒に委員頑張ってきた。

これが終わったら、雅さんはまたピアノに集中する日々になる。

その前に、楽しい思い出つくりたいって思ってた。

やのに、こんなことで彼女との仲が気まずいままっていうのも嫌や。

「一緒に撮ろう。」

つかんでいた腕を引っ張り、雅さんに笑いかける。