「ピアノ、ただ楽しく弾いてるだけじゃあかんのかな?」
「え?」
「ただ、こうやって、好きな曲を好きなときに弾いてるだけじゃあかんの?」
俺にきいてる感じじゃなかった。
自分自信に問いかけてる感じでもない。
もしかして・・・・
「コンクール、とか?」
バスケ部の連中が言っていた。
天才少女の意味。
でたコンクール全部優勝しかしていない、という実績。
雅さんは、コクっと頷く。
「ではじめた頃は、楽しかった。
お客さんに、いっぱい拍手もらって、トロフィーももらって
そしたらお母さんもお父さんも、ピアノの先生も喜んでくれて。
・・・・でも。
最近、なんか・・・すごい苦しい。
周りは、優勝以外認めへんって感じやし、
お客さんも、ただわたしの音楽を楽しんでくれてるっていうより
好機の目で見てて・・・
先生も、最近はわたしの好みより、ちょっとでも難しくて技術がいる曲ばっかり選曲してくる。」
そう言って、彼女は辛そうに目を伏せる。
「わたしは、まだピアニストになるって決めたわけでもない。
趣味の一環のつもりやのに、
お母さんはそうじゃないみたいで
練習時間の確保と指を守るために、友達と遊ぶことすら許してくれへん。
わたしは、ただ楽しくピアノが弾きたいだけやのに。」
窓から入ってきた風がさらさらと彼女の黒い綺麗な長い髪をゆらした。
光があたって、ピアノと同じようにキラキラと輝いている。
その中で、さみし気に微笑む彼女は
すごく綺麗だった。


