「そう...本当はどの指がいいか、聞いてもいいのだけれど。 残念ながら切り落とす指は決まっているのよ。」 母はそういいながら、父に背を向ける形でわたしの前にひざをついた。 わたしの正面にひざをついたため、父は母と重なって見えなくなる。 わたしの左手を手に取り、薬指を指差す。 「この指。 でもこの指を切り落とすと...結婚指輪、つけられないわね」 表情もなく母は言う。