「……あれ、」


 十一月下旬。いよいよ冬も本番になり、外に出れば冷たい風が頬をつくようになった。

 部活に入っていない私は、放課後になると図書室で勉強をすることにしている。別に勉強なら自習室でも家でもできるけれど……勉強の合間、息抜きに本が読めるこの環境を、私は気に入っていた。

 そして今日も、例のごとく図書室の扉を開いて中に入る。室内の暖かい空気が、一気に私を包み込んで―――。


「…………」

 ふと目を向けた先。向かって左手の、奥から二番目。私愛用の八番テーブル。
 私しか利用しないはずのその場所に、今日は先客がいる。

 訝しみつつ近寄ってみれば、そこには突っ伏して寝ている茶髪男子がひとり。そして彼が陣取るのは、これまた私がいつも座っている椅子。他にも空いた席はあるのに、どうしてわざわざこのチョイスなの……。

「………さいあく」

 運悪いなあ。今日は他のテーブルにしとく? ……いやでもなあ……。
 いつも利用しているテーブルなだけに、簡単に手放してしまうのはなんだか惜しい。この状況をどうしたものかと悩んでいると、やがて寝ていた男子の背中がぴくりと揺れた。