十二月に入ると、図書室の内装がクリスマス仕様になった。カウンターには小さなツリーが置かれ、新書コーナーでは色紙で作られたサンタクロースがポップを飾っている。
 木村先生がせっせとこれを作ったのだと思うと、なんだか微笑ましい。

 十脚のテーブルの上にも、松ぼっくりをツリー仕立てにデコレーションしたものがひとつずつ置かれていたが、―――八番テーブルにいつもの茶髪の彼の姿がない。
 珍しく、この日は私が一番乗りだったようだ。


「……手嶋先輩、今日はどうしたんですか」

 しかし、いつもいる人がいないというのは居心地が悪いもので。外国文学コーナーの整理をしていた木村先生を捕まえ、つい聞いてみてしまった。
 一瞬きょとんとした先生は、すぐに何かを察したかのように微笑む。

「気になる?彼のこと」
「いや別に……いつも先に来てるのに、なんでかなって、」
「ちょっと気になっちゃう?」
「………はい」

 観念して頷いた。気恥ずかしさから俯く私に、いい傾向だね、と笑いかける木村先生の声はいかにも楽しそうだ。