今思えば、あの出会いが俺たちの日常を
大きく変えたのだということがわかる。










「あ、はい・・なんでしょうか・・?」










僕の最初の印象は長身長髪、高そうな
スーツを1つの乱れもなく着こなしている、
まさに「仕事かできる男」という印象だった。










そう、スカウトだったのだ。
そのおっさん・・真鍋さんって言うんだけど。
某タレント事務所の社長さんで、
これは後になって聞いた話だが、僕たちが
ベンチに座って喋っていたときから
後をつけていたらしい。
まったく・・やらしいおっさんだよ。










どうも真鍋さんは、僕たちの会話を聞いて
興味を持ってくれたらしい。
これも後になって聞いた話だが、
僕たちの喋りは、相手と言葉が被ることがなく、滑舌もよくて、聞いててスッと入ってくるんだとか。










「----ま------まっ!」










それから僕たちは何度か会ったりして、
今この状況。真鍋さんの設立した事務所
に所属することになったのだ。
まだ設立されてから日が浅いから、
所属声優さんの数も少ない。
しかも、所属してる声優さんも、駆け出しの
人がほとんどなんだ。











「ちょ・・・!悠馬!!」










そんな中、僕たちはつい先日、初アニメ出演(まぁ、サブキャラなんだけどね)やラジオでは、MCまでやらせてもらっている。
嬉しい限りです。










「悠馬ったら!!!」





「ふぇ!?」





「ふぇ!?じゃないよ!オンエア中だよ?
なにボーっとしてるの!」





どうやら自分の世界に入ってしまっていた
ようだ。反省反省。





「まったく・・ちゃんとしてよね?私たち
の頑張り次第でギャラが上がるかもしれな
いんだから!」





「ギャラ貰ってるだけでもありがたいと
思えよ!」





つい最近まで素人だった俺らをスカウト
までしてくれたんだから。





「ギャラだけじゃなくて、
役も貰いたいよね。これ聞いてる
偉い人ー!検討してみてください~い!」





「図々しいなオイ!!!」