ライラックをあなたに…



夜空には綺麗に幾つもの星が輝いていた。



「ねぇ、一颯くん」

「ん?」

「明日は会社………行かないと不味いよね?」

「ん~………行きたくないなら休めば?」

「休んでもいいのかな?」

「いいんじゃない?………たまには」

「今日、休んだよ?」

「じゃあ、明日もまだ体調不良って事で」

「…………そうだね」



夜道を歩きながらため息が零れ出す。


別に仕事が嫌いな訳じゃない。

ただ、彼と鉢合わせするのが怖いだけ。

それに退職届を出して、近々有給休暇を消化しようと思ってたから、休めない訳ではない。



なのに、止めどなく溢れ出すため息。


その理由は明らかだった。

―――――――あのマンションへ帰らねばならない。


休むにしろ、出勤するにしろ、自宅へ帰らないと着替えも無い。

化粧道具だって殆ど持ち歩いてないから、今はほぼすっぴんに近い。


一颯くんはそれに対して何も触れて来ない。

彼のその優しさが、今の私にはとても有難かった。