ライラックをあなたに…



「あの」

「ん?……何だ」

「寿々さんと別れて、他の人とご結婚なさるんですよね?」

「ッ?!………どうして、それを?」


この男も昨日の通話を知らない。


「……寿々さんから聞きました」

「………そうか」


彼は電話越しで深いため息を吐いた。


「政略結婚と言えば分かるだろう?俺にはどうする事も出来ず、結婚する以外方法が無いんだ」

「それで、寿々さんを捨てたんですか?」

「………」


返答が無いのは肯定したのと同じ事。


「その結婚、やめる訳にはいかないんですか?」

「………」


やはり、返答が無い。


「愛した女性が『死』を選ぶほど追いつめられているのに、それでも断る事は出来ないんですか?」


俺は彼女の事を思い、切実に伝えようとしたのだが……。


「………それは、無理な相談だな」


ボソッと吐き捨てるように呟いた相手。


「俺は………やれるだけの事はやったつもりだ」

「ッ?!」