ライラックをあなたに…



「一颯くん、お風呂ありがとうね」

「ん」

「ん?……何?凄くいい匂い」

「寿々さんの夕食を作っておいたよ」

「えっ?」

「俺、これからバイトだから」

「あっ……そうなんだ」

「消化にいい豆乳リゾットにしたから、食べたくなったら温め直してね」

「………ありがと」

「いいえ、どう致しまして」


俺はハーブティーを入れたカップを手にして、彼女をソファへと促した。

彼女をソファに座らせ、俺は床に腰を下ろした。


すると、


「侑弥さん」

「ん?」

「彼から電話があったって言ってたけど、他には何か言ってた?」


彼女はカップ越しに不安そうに尋ねて来る。

俺が昨夜、電話した事も知らず。



「ん~、俺が『体調が悪い』と伝えると驚いてはいたけど、『二日酔い』だと話したら納得した様子だったよ」

「…………そう」


彼女は悲しそうな表情でハーブティーを口にした。

俺もまたカップに口をつけながら、今朝の電話を思い返していた。