ライラックをあなたに…



ベランダは想像以上に広く、マンションの角部屋らしい彼の部屋には、くの字型の広いベランダが。


そこには、色とりどりの花やハーブが植えられた鉢植えがズラリと並んでいる。

さらに、ベランダの一角には煉瓦で高く盛られた畑のような場所まで。


ウッドデッキ状に造られた場所にはガーデンファニチャー(テーブルセットやスイングベンチ)もある。



「なっ、何……ここ?!」


私は驚いて、思わず声を漏らしてしまった。

だって、手入れは行き届いているし、センスも抜群。

心地良い風が吹き抜けて、開放感が堪らない。


7~8階くらいかしら?……この階。

大きな川沿いに建っているらしく、見晴らしが良い。


私は魔法に掛かったみたいに、絶景に見惚れていた。


すると、


「寿々さん………寿々さん?」


少し低めの落ち着いた声と共に、目の前に掌がヒラヒラと……。


「寿々さん、トリップしてないで、ちゃんと身体で払ってよ?」

「へ?」

「ほら、しっかり働いてね?」

「………」