ライラックをあなたに…



「あっ、いや、寿々さん!!」

「えっ?!」


急に彼に右腕を掴まれた。


「なっ、何?」


思わず、彼の方へ振り返ると


「シャワーは終わってからの方がいいよ」

「えっ?」



『終わってから』……シた後にって事?

そりゃあ、終わってからも入りたいけど、昨夜は入って無いから気持ち悪くて……。


「すぐ済ませるから、シャワーだけ……ダメ?」


懇願するように彼を見つめると、私の腕を掴んだまま立ち上がり、


「キャッ!!?」


グイッと彼の胸元へ手繰り寄せられた。

そこはまるで、私の場所だと思わせるくらい心地の良い彼の胸。

長い腕に抱きしめられて……。


彼はそんな私の耳元に少し低めの声で囁いた。


「寿々さんって意外と大胆なんだね」

「ッ!!?べっ、別に……私は……」


すぐさま否定した所で、何の意味も持たない。

けれど、本当の私とはかけ離れている事を言われると、反応せずにはいられない。