ライラックをあなたに…



酔い潰れた女や具合の悪い女を無理やり抱くのは犯罪だもの。

真面な人間ならするはず無い。


けれど、正気に戻った女に『了承』を得てするなら、何の問題も無い。


彼の善人ぶりにすっかり騙されてしまったわ。

所詮、男なんて皆、『表と裏』の顔があるに決まってる。


―――――そう、あの人のように……。


私はゆっくり目を閉じて、深呼吸した。


今の私に価値なんて存在しない。

『死』を選択した時点で、この世の全てに自分の存在を消したのだから。


見ず知らずの男に抱かれたとしても、背徳感を感じる事もない。

生きようが死のうが、今さら私には関係のない事。



私は今一度、深呼吸し、ゆっくり目を開けた。

すると、目の前には不思議そうに見つめる彼が。


「いいわ。あなたの好きなように」


私は意を決して、彼を見つめ返すと、


「ホントに?」

「えぇ。だけど、その前にシャワーを浴びさせて?」



私は恥じらいを捨てて、彼にそう告げた。